【レビュー】SONY「WH-1000XM3」を使って分かった8つの評価:ノイズキャンセリング性能や高音質化の実力に迫る

よりプライベートな音楽ライフを楽しむには、ヘッドホンは必須アイテムだと思っている。

そのヘッドホンにノイズキャンセリング機能が付いているなら、なおも快適度は充実。集中して音を聞ける静寂な環境をハウジング内部で作り出し、周囲の環境に左右されることなく、どこにいても音楽本来の最大限の魅力を引き出せるからだ。

そんな考えから、ぼくの所持する音楽アクセサリーはノイズキャンセリング機能を搭載した製品で溢れている。特にお気に入りはBOSE「QuietComfort 35」と「MDR-1000X」。どちらもノイズキャンセリング機能を搭載したヘッドホンとして市場でも人気の位置にあることは間違いない。

そして、2018年10月。SONYから最新型となるノイズキャンセリングヘッドホン「WH-1000XM3」が登場。

前作の「WH-1000XM2」の性能をさらに上回る業界最高クラスのノイズキャンセリング性能、ワイヤレスヘッドホンでありながらさらなる高音質化を実現したという段違いとされる期待のワイヤレスヘッドホンだ。

今回はSONY 「WH-1000XM3」を実際に使ってみて感じた音質、機能性、装着感、初代ノイキャンヘッドホン「MDR-1000X」やBOSE「QuietComfort 35」と比較してどのような違いがあるのか、「WH-1000XM3」について徹底レビューする。

 

目次

落ち着いた質感・軽量感溢れるデザインでより身近なヘッドホンに

まずは外観から。

「WH-1000XM3」のカラバリエーションは「ブラック」と「プラチナシルバー」の2種類。こういったアクセサリー類は白か

黒といったよりコントラストの強いカラーを個人的に好むことから今回は「ブラック」を選択した。

まず開封してヘッドホンを眺めて気付いたのがイヤーカップの素材の変化。

初代「MDR-1000X」はレザーのような柔らかな質感だったのに対し、「WH-1000XM3」ではマット仕上げのPET素材のような材質で構成されている。これは軽量化のためだろうか。

詳細はわからないが、デザイン的に若干高級感は薄れるものの、軽量感を大きく感じられる仕上がり。

指触りも非常に滑らか。

これぞマット仕上げと呼べるようなスベスベなつや消し感が、落ち着いた印象を与えてくれる。

伸縮させると中からはアルミ丁寧に削り出したようなメタリックなフレームが登場。

ヘッドホン全体としてブラックカラーの統一感あるデザインが、使う人に大人の魅力を与えてくれるような趣の深い仕上げになっている。

操作ボタン類は右[R]側に集約。電源ボタンとノイズキャンセリング/アンビエントサウンドモードを切り替えるボタンのみで非常にシンプル構成でコントロール系が配置されている。

 

イヤーパッドには、全モデルの「WH-1000XM2」よりも設置面積が20%向上した低反発ウレタン素材を使った合成皮革の立体縫製イヤーパッドを採用。

面積が大きくなるということは両耳にかけた時、はさみ込む力がより分散されるということ。飛行機のフライトなど長時間利用するには最適な設計だ。

実際に「WH-1000XM3」を装着すると、ヘッドホン特有の耳周りの窮屈感をそこまで感じない。むしろクッションが側頭部に触れている部分は心地良いと感じている。

イヤーカップのサイズも大きめに作られていて、比較的サイズの大きい僕のも耳もすっぽりと覆ってくれるほどの余裕がある。

オーバーイヤー型のヘッドホン、さらにノイズキャンセリング機能を搭載するなら、イヤーカップ内部を外界から遮音することは非常に重要な要素。

余裕のあるサイズに作られた形状で、ノイズキャンセリングする前段階の遮音環境をしっかりと作り込みつつも、使用するユーザーに負担をかけないのが「WH-1000XM3」の装着感だ。

 

期待どおりのノイズキャンセリング性能、作り出す静寂空間の質に注目

「処理能力が4倍」「キャンセリング効果を強化」とスペック上のことを書いてもあまり実感が湧かない。

むしろ、実際にノイズキャンセリング性能の効果はどのようなものなのかという体感的な部分が一番気になるところ。

特に「WH-1000XM3」は、ヘッドバンド型ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン市場において、”業界最高クラスのノイズキャンセリング性能”を持つということが大々的に謳われいる。この性能こそが「WH-1000XM3」最大のポイントといっても過言でない。

実際にノイズキャンセリング機能をONにしたところ、そこまで驚くほどのものではないというのが率直な印象。

キャンセリング効果が甘いというわけではなく、しっかりと外部の音をシャットアウトしてくれていることには間違いない。

ただ、僕自身はこれまでも「MDR-1000X」やBOSE「QuietComfort 35」 でノイズキャンセリング機能は使ってきているので、その能力と比較するとさほど驚くほどのものではなく、むしろ期待通りのノイズキャンセリング性能であると感じた。

と、ここまでが装着後すぐに使用して感じた第一印象の話。

使い続けると不思議と従来製品との違いを感じるように・・・。

それは、ノイズキャンセリングの質が違うということ。

ヘッドホン内の静寂感が増すというよりは、より幅広いノイズに対して効果が出ていることがわかる。

従来の製品もそうだが、ノイズキャンセリング機能をONにするとキャンセリング機能によって、ヘッドホン外で発生した「ゴー」という低音ノイズが、「サー」という極小な音へ変化する。

「WH-1000XM3」はこの「サー」という音の角が無くなり、よりマイルドになったようなキャンセリング効果を実感できる。

ただし、これはかなり微妙な変化だ。ノイズキャンセリング機能を担うプロセッサーQN1の処理能力が4倍という仕様上の潜入感があるせいか、劇的に環境が変わるような過剰な期待をしてしまったのは事実。

従来品よりもノイズキャンセリング性能が向上していることは間違いないが、過度な期待はしないほうが良いかもしれない。

 

解像度の高い音質で音楽本来の魅力を引き出す

結果から先に述べると、ノイズキャンセリング性能の進化よりも音の解像度の向上、すなわち高音質化の方がより大きな進化を感じられた。

低音・中音・高音域に渡るまで全ての音域で1つ1つの音がしっかりと聞こえるようになった。いわゆる低音域と高音域の「ドンシャリ」で何となく高音質っぽく仕上げているような製品とは1段も2段も違う。「ワイヤレスは有線接続よりも音質が劣化するのでは・・・」そんな悩みが遠い過去のように感じる。

特に低音から中音域の解像度が格段に向上したと思う。何となく発されていた低音がしっかりとベースラインにのり、より存在感ある音として聞くことができる。ロックやEDM、ダンスミュージックといった低音や中音が濃いカテゴリーの音楽好きの持ってこいな音質だ。

ここで「WH-1000XM3」対応するコーデックを載せておく。型落ちとなった「WH-1000XM2」と初代「MDR-1000X」も比較のため掲載。

コーデック WH-1000XM3 WH-1000XM2 MDR-1000X
SBC
AAC
aptX
aptX HD
LDAC  ○

 

僕が愛用しているiPhone XS MaxはiOS端末であるため、デフォルトのミュージックアプリがハイレゾ音源には非対応。「WH-1000XM3」は高音質コーデックの「LDAC」に対応しているが、現状ではこの恩恵は受けられない。

しかしながら、「WH-1000XM3」は「DSEE HX」という高音域の補完機能を搭載。ハイレゾ音源でなくても圧縮された高音域を補完しハイレゾ相当の高音質までアップスケーリングする機能がある。

この機能の効果があってか高音域の抜けも非常に良く、音の広がりや伸びもしっかりと再現されていると感じる。

「WH-1000XM3」の低音から高音域まで幅広い帯域で高音質化されたことにより、音楽本来の魅力を引き出してくれることは間違いない。

 

専用アプリでの音質コントロール機能は多様なユーザーの好みに細かく対応

「WH-1000XM3」との接続は、ペアリングモードにして設定アプリのBluetooth設定から接続することもできるが、SONYから提供されている専用アプリ「Headphones Connect」を使用するとさらに快適に。

機器との接続はもちろん、22段階で細かく外音の取り込みレベル調整できる他、音楽が聞こえる方向を設定できるサウンドポジションコントロール、アリーナ・コンサートホール・クラブといったサラウンド環境の設定、細かく音質をカスタマイズできるイコライザなど、チューニング項目が満載だ。

音楽のカテゴリーや個人の嗜好によって同じ音楽でも全く違う色に変えることができるので、より細かなパーソナライズを可能にしている優秀なアプリだと感じた。

 

従来の操作性はしっかりと引き継ぎ快適な使用感

初代ノイズキャンセリングヘッドホンである「MDR-1000X」からの快適な操作性は顕在。

ハウジング部分にはタッチセンサーコントロールパネルが搭載され、再生/一時停止/曲送り/曲戻し/音量大/音量小といったコントロールが可能。iPhoneなどのスマートフォン端末を取り出さずとも、手元でこれら音楽再生の基本となるアクションを全てこなせることは操作性の高さを感じる。

使い始めた当初はどの方向がどのコマンドに対応している戸惑いもあるが、これは時間が解決する問題。使い続ける内に必然と覚えてくるので心配は無用だ。ぼくは「MDR-1000X」を使い続けていることもあり、操作性は引き継がれているので全く抵抗はなかった。

さらに、便利な機能として紹介しておきたいのが「クイックアテンションモード」。右側のハウジング部分を手のひらで覆うことによって一時的に音量を極小状態にすることができる。

電車内でアナウンスや人の声を急に聞きたいような場面では大いに役立つ機能であり、初代「MDR-1000X」から搭載されているが、ぼくの中では絶対に外せない便利な機能だ。「WH-1000XM3」にも「クイックアテンションモード」が継続されているということは、それだけ利便性の高さを感じているユーザーが多いのだろう。

 

さらに向上した驚異的なスタミナを誇るバッテリー

充電端子は、従来のmicroUSB端子から、USB-C端子へと進化。そして、「WH-1000XM3」は公称で最大30時間使用できるバッテリー性能を誇る。しかもこれはノイズキャンセリング機能をON状態にしている仕様値というから驚きだ。

ノイズキャンセリング機能の効果が最大限発揮される飛行機での長距離フライトにも全行程で対応できるだけのスタミナは驚異的といえるだろう。

実際の生活では、普段から使用しているヘッドホンを毎日充電するというは少々面倒に感じる。バッテリー持ちが30時間であれば平日に毎日6時間ずつ使える計算。

通勤や通学でフル使用しても1週間に1度充電すれば良いので、充電作業を億劫に感じるユーザーにも最適だ。

さらにクイック充電機能も搭載され、わずか10分間の充電で5時間使用可能となるバッテリー性能は、充電を忘れていたタイミングに大いに役立つ機能。「急に使いたくなった時にすぐに使える」を可能にする凄まじいバッテリー技術だ。

 

「WH-1000XM3」と「MDR-1000X」を比較

左:WH-1000XM3 右:MDR-1000X

仕様面での比較はさておき、ぼくがずっと使ってきた初代「MDR-1000X」と体感的な部分で比較したいと思う。

ノイズキャンセリング性能に関しては前述のとおり。そこまで大きな差は歴然と感じるわけではないが、よく耳をすますとキャンセリングされた静寂な空間の質が若干異なるように感じる。より、自然に近い静寂な空間で聴ける音楽は、ユーザーの満足度をさらに向上させることに違いない。

音質に関しては、もうこれは圧倒的な差を感じたと言わざるを得ない。音の解像度が全く異なる。

初代「MDR-1000X」から圧縮音源をハイレゾ相当に高音質化できる「DSEE HX」機能は搭載されているものの、やはり低音から中音域では音が潰れてしまっているように感じる。

「WH-1000XM3」では、低音域をしっかりと表現しベースラインをしっかりと作りこむことで、しっかりとした音楽自体の土台を作りあげているので、同じ曲を聴いていてもより力強いしっかりとした音楽を楽しめる。

初代「MDR-1000X」は生産が終了されているので、これから購入するというよりは、僕のように2年前からずっと愛用しているという人が多いと思う。

そのユーザーが2年越しに買い替えを検討しているのであれば、買い替えない理由は見つからない。GOサインが即出てもおかしくない性能の進化だと思う。実際に、僕自身もスペックだけをみて買い替えを決意したが、結果大満足している。

 

SONY「WH-1000XM3」とBOSE「QuietComfort 35」を比較

他社製品にはなるが、ノイズキャンセリング性能と迫力ある重低音が特徴的なBOSE「QuietComfort 35」も、同市場の対抗馬となる製品にに位置づけられるだろう。僕も初代「MDR-1000X」同様に愛用してきた製品の1つだ。

元々重低音サウンドが好みなぼくはBOSE製品を好む傾向にある。力強い重低音がなり響く音楽は快感以外の何者でもない。

SONY「WH-1000XM3」とBOSE「QuietComfort 35」 を比較して驚いたのは、「WH-1000XM3」から再生される低音域の厚みが「QuietComfort 35」より何倍にも増していること。

音楽業界に携わっているわけでもない僕のような素人でも、あからさまに低音域の厚みの違いを実感できた。バスドラムの音が脳の奥まで響いてくる。ロック音楽好きにはたまらないサウンドだ。

とはいえ、厚みのある低音に潰されずに高音域の解像度も「WH-1000XM3」の方が圧倒的に高い。よりメリハリのあるシャープなサウンドを楽しむことができる。

唯一、装着感やデザイン性に関しては「QuietComfort 35」に軍配があがる。締め付け感をそこまで感じることなく軽い付け心地を実感できた。ハウジング部分もより楕円形を描いている「QuietComfort 35」の方が、スタイリッシュに見えるように感じた。

価格はどちらも約4万円。ヘッドホンは、デザイン・装着感・ノイズキャンセリング性能・音質によって総合的に評価するべきであるので個人差はあると思うが、僕は「WH-1000XM3」を支持する立場を取りたい。

 

ワイヤレスのノイズキャンセリングヘッドホン史上最高の仕上がりに

新潟県という田舎に済む僕は首都圏のように電車で通勤通学するような環境ではないが、自宅脇に2車線の国道8号線と上越新幹線の高架があることから、窓を開けると常に環境音との戦う立地。そのため、ノイズキャンセリング機能は普段作業する上で欠かせない機能である。

好みの音楽を楽しむ日常をより鮮やかなものへと変えてくれる「WH-1000XM3」の体験は唯一無二のもの。

1つ1つの音楽がもつ本来の魅力を知りたいのであれば「WH-1000XM3」は力強い導き役として活躍してくれるだろう。

SONYが誇るワイヤレスヘッドホン技術の集大成ともいうべきフラッグシップモデル「WH-1000XM3」をぜひとも体験してみてはいかがだろうか!?

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